大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

横浜地方裁判所 昭和52年(行ウ)5号 判決

原告

東京産業株式会社

井出正敏

右訴訟代理人

井出正光

玉利誠一

被告

厚木税務署長

高橋辰四郎

右訴訟代理人

島村芳見

右指定代理人

青木正存

外三名

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告が原告の法人税につきなした

(一) 昭和四六年六月一日から同四七年五月三一日までの事業年度(以下「昭和四七年五月期」という。)についての同五〇年六月三〇日付け再更正のうち二二四一万九三〇一円を翌期へ繰り越す欠損金に加算しなかった部分

(二) 昭和四七年六月一日から同四八年五月三一日までの事業年度(以下「昭和四八年五月期」という。)についての同五〇年八月三〇日付け更正及び過少申告加算税賦課決定(ただし、同五五年一二月三日付け再更正及び過少申告加算税賦課決定により一部減額された部分を除く。)により納付すべきものとされた法人税額一五二六万八四〇〇円のうち六三万二五〇〇円を超える部分及び過少申告加算税額七六万三四〇〇円のうち三万一六〇〇円を超える部分

(三) 昭和四八年六月一日から同四九年五月三一日までの事業年度(以下「昭和四九年五月期」という。)についての同五〇年八月三〇日付け更正及び過少申告加算税賦課決定(ただし、同五五年一二月三日付け再更正及び過少申告加算税賦課決定により一部減額された部分を除く。)により納付すべきものとされた法人税額七六五五万一〇〇〇円のうち七二六六万九七〇〇円を超える部分及び過少申告加算税額七三万二三〇〇円のうち五三万八三〇〇円を超える部分をいずれも取り消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

主文と同旨

第二  原告の請求の原因

一  原告はチョコレート類の製造販売を業とする会社で、被告から青色申告書による申告の承認を受けているものであるところ、原告の昭和四七年五月期、同四八年五月期及び同四九年五月期の法人税について、原告のした確定申告、被告のした更正、再更正及び過少申告加算税賦課決定(以下、被告のした昭和四七年五月期の同五〇年六月三〇日付け再更正及び過少申告加算税賦課決定並びに同四八年五月期及び同四九年五月期の同五〇年八月三〇日付け各更正及び過少申告加算税賦課決定(ただし、同五五年一二月三日付け再更正及び過少申告加算税賦課決定により一部減額された部分を除く。)を「本件更正等」ということがある。)並びに不服審査の経緯は、別表一の1ないし3記載のとおりである。

二1  被告がした本件更正等のうち、

(一) 昭和四七年五月期の再更正において、原告が減価償却費として損金の額に算入した四三七八万一四三二円のうち二二四一万九三〇一円を、

(二) 昭和四八年五月期の更正において、原告が減価償却費として損金の額に算入した三六一二万二五六五円のうち一七四〇万六八五四円を、

(三) 昭和四九年五月期の更正において、原告が減価償却費として損金の額に算入した二九八六万九四八五円のうち一四二三万四一七九円を、

それぞれ償却限度額を超えるものとして損金とは認めず、これを課税所得金額に加算したのは違法である。

2  したがって、

(一) 昭和四七年五月期の再更正のうち二二四一万九三〇一円を翌期へ繰り越す欠損金に加算しなかつた部分

(二) 昭和四八年五月期の更正及び過少申告加算税賦課決定(ただし、同五五年一二月三日付け再更正及び過少申告加算税賦課決定により一部減額された部分を除く。)のうち、法人税額につき六三万二五〇〇円を、過少申告加算税額につき三万一六〇〇円をそれぞれ超える部分

(三) 昭和四九年五月期の更正及び過少申告加算税賦課決定(ただし、同五五年一二月三日付け再更正及び過少申告加算税賦課決定により一部減額された部分を除く。)のうち、法人税額につき七二六六万九七〇〇円を、過少申告加算税額につき五三万八三〇〇円を超える部分の取消しを求める。

第三  請求の原因に対する認否

一  請求の原因一の事実は認める。

二  同二は争う。

第四  被告の主張

一  原告の昭和四七年五月期、同四八年五月期、同四九年五月期の法人税について、原告のした確定申告には別表二の1ないし3の「加算金額」欄記載の所得金額の計上漏れが認められるので、これを所得金額に加算すると、右各期の課税所得金額、法人税額、過少申告加算税は、別表二の1ないし3記載のとおりとなり、本件更正等は右金額の範囲内であるから適法である。

右課税所得金額の算定根拠のうち、原告が争つている原告が、昭和四六年九月三〇日、丸紅株式会社(変更前の商号、丸紅飯田株式会社。以下「丸紅」という。)から買い戻した別紙図面斜線部分以外の工場二棟及び倉庫二棟(以下「本件工場・倉庫」という。)並びに別紙機械器具目録記載のチョコレート製造設備(以下「本件機械装置」という。なお、本件工場・倉庫と本件機械装置を一括して「本件資産」ということがある。)についてした減価償却のうち被告が償却限度超過額として損金算入を否認した部分についての詳細は、次のとおりである。

二  原告と丸紅との間の代物弁済契約及び買戻し契約について

1  原告は、丸紅に対する八億〇九二八万七五二五円の債務を弁済するため、丸紅との間で締結した昭和四五年四月一六日付け代物弁済予約完結等契約に基づき、本件資産を含む資産を六億六一三〇万七〇〇〇円で丸紅に譲渡して当該金額に対応する丸紅に対する債務を消滅させ、また代物弁済によつても満たされない部分の一億四七九八万〇五二五円の債務については準消費貸借契約を締結し、その利息については免除を受けた。

2  原告は、右代物弁済後一年を経過した後、事業好転の見通しを得て代物弁済をした物件のうち、本件資産及び別紙図面斜線部分以外の土地(以下「本件工場等敷地部分の土地」という。)につき三億九六九三万八〇〇〇円で買い戻したい旨を丸紅に申し出、双方協議の結果、昭和四六年九月三〇日付けで本件工場・倉庫を六〇〇〇万円(内訳、工場一棟三九七八万円、工場一棟一六四〇万円、倉庫一棟一六二万円、倉庫一棟二二〇万円)、本件機械装置九一〇二万七八三〇円、本件工場等敷地部分の土地二億四七九七万二一七〇円で買い戻して所有権を取得した。なお、右代物弁済契約違反ということで争われていた事項に関して、丸紅との間に成立した昭和四六年一二月二〇日付け沼田簡易裁判所における即決和解でも右売買の成立が確認されている。

3  ところで、原告は、右代物弁済において本件資産を含む資産の所有権の移転があつたと認識したうえ、右資産の譲渡価額と帳簿価額との差額二億二一九二万六四一二円を不動産売却益として昭和四四年六月一日から同四五年五月三一日までの事業年度(以下「昭和四五年五月期」という。)の所得金額の計算上益金に算入し、また丸紅に対する債務額のうち右譲渡価額相当額の債務を減少したうえ、法人税確定申告書を被告に対して提出する一方、丸紅も原告と右代物弁済契約をした同年四月一六日を含む事業年度において右代物弁済物件を固定資産として帳簿に計上するとともに、原告に対する債権額を六億六一三〇万七〇〇〇円減額した。

更に、同四六年九月三〇日付けの右買戻しについて丸紅は、本件工場等敷地部分の土地の売買価額二億四七九七万二一七〇円と取得価額二億四六七〇万一八三九円(同四五年四月一六日の土地代物弁済価額四億六四三一万八〇〇〇円に附帯費用八三万四八七〇円を加え、売買土地面積に相当する部分として算出した金額)との差額一二七万〇三三一円、本件工場・倉庫の売買価額六〇〇〇万円と帳簿価額五九四九万八八六七円との差額五〇万一一三三円、本件機械装置の売買価額九一〇二万七八三〇円と帳簿価額七五二八万四二八〇円との差額一五七四万三五五〇円をそれぞれ固定資産売却益として会計処理を行い、これに加えて原告は、代物弁済した土地、建物等の明渡しが遅延したことに伴う同四五年四月から同四六年三月までの損害金五〇〇〇万円を丸紅に支払う等の処理をとつている。

以上の事実からも右代物弁済契約と買戻し契約は全く別個の契約であり、各契約の都度所有権が移転していたことは明らかであるから、原告が買戻しにより取得した本件資産等に付すべき取得価額は、原告と丸紅の間で合意した売買価額、すなわち本件工場・倉庫六〇〇〇万円、本件機械装置九一〇二万七八三〇円、本件工場等敷地部分の土地二億四七九七万二一七〇円の合計額三億九九〇〇万円とするのが相当である。

三  本件資産の減価償却額の算出について

ところが、原告は、丸紅から買い戻した本件資産の減価償却額の算出に当たつて、右代物弁済及び買戻しを実質上譲渡担保及びその担保物件の買戻しであり所有権の移転はなかったものとして、昭和四五年四月一六日の代物弁済時の原告の帳簿価額から買戻しをした日までの期間に対応する減価償却額を控除した価額、すなわち本件工場・倉庫については七七三二万五九六七円、本件機械装置については二億〇三七八万一〇五九円が本件資産の取得価額であるとし、別表三の1ないし3記載のとおり減価償却額を計上して法人税の確定申告をした。

しかし、原告の右減価償却の算出方法は誤りであり、被告が本件資産の取得価額を同四六年九月三〇日の売買価額であるとして減価償却限度額を計算する(なお、その耐用年数、償却率については原告主張のものによる。)と別表四の1ないし3記載の金額となるから、原告が主張する減価償却額のうち別表四の1ないし3記載の償却限度額を超える部分は法人税法上当期の損金とは認められないので、減価償却の限度超過額として所得金額に加算されるべきものである。

四  昭和四八年五月期及び同四九年五月期の各法人税額及び過少申告加算税の算出について

原告の昭和四八年五月期及び同四九年五月期の各法人税額及び過少申告加算税の算出方法は、別表五の1、2記載のとおりである。

第五  被告の主張に対する認否

一  被告の主張一は争う。

二1  同二の1、2は否認する。

2  同二の3のうち、昭和四五年四月一六日及び同四六年九月三〇日の本件資産の代物弁済及び買戻しにつき、原告及び丸紅において被告主張のような会計処理、税務処理をしたこと及び原告が丸紅に対し損害金五〇〇〇万円を支払つたことは認めるが、その余は否認又は争う。

三  同三のうち、原告が、本件資産の減価償却額の算出に当たつて、被告主張のような計算方法で減価償却額を計上して法人税の確定申告をしたことは認めるが、その余は争う。

四  同四は争う。

第六  被告の主張に対する原告の反論

一  被告の本件資産の減価償却の限度額の算出方法は、次の二点で重大な誤りがある。第一点は、昭和四六年九月三〇日の買戻し契約は、代物弁済による債権債務の最終処理の確定ないしは譲渡担保物件の買戻しであるにもかかわらず、これを新規の売買と認めた点であり、第二点は、右買戻しにかかる本件資産の価格として、時価とは関係なく、丸紅が債権債務の処理のため便宜的に定めた価格を正当な価格と認めたことである。

二  買戻し契約について

1  原告は、昭和二五年ころ以降継続して丸紅からカカオ豆その他のチョコレート製造原料を購入してチョコレート類を製造販売してきたところ、業績悪化により同四五年四月ころには原告の丸紅に対する累積債務が八億円を超えるに至つた。そこで、丸紅は、原告の工場の土地建物及び機械設備等を代物弁済として取得し、一挙に原告と丸紅との債権債務関係を整理しようとした。これに対し、原告は、あくまで工場の存続を強く希望し、丸紅との交渉の結果、事務所等の土地建物を代物弁済として譲渡することはやむをえないとしても、原告の操業継続に可能な範囲の本件工場・倉庫及び本件機械装置については、一年間の猶予期間を設け、その間における原告の業績をみたうえで最終処理方法を決めることとし、原告と丸紅との間で、昭和四五年四月一六日、左記のような内容の代物弁済等の契約(以下「本件代物弁済契約」という。)を締結した。

(一) 原告は丸紅に対し、昭和四五年四月一六日現在、商品買掛金・手形金・借入金・利息金・立替金債務等合計八億一一三一万八九四五円を負担していることを確認し、原告と丸紅とは、これを金銭準消費貸借の目的債務とする。

(二) 丸紅は原告に対し、右同日現在、商品買掛金債務二〇三万一四二〇円を負担していることを確認する。

(三) 原告と丸紅とは、右(一)、(二)の各債権債務を対当額につき相殺し、その結果原告の丸紅に対する債務額は八億〇九二八万七五二五円となることを確認する。

(四) 原告は丸紅に対し、右八億〇九二八万七五二五円の債務のうち、六億六一三〇万七〇〇〇円について、

(1) 神奈川県大和市下鶴間字乙五号二五六五番二の土地ほか一〇筆、実測面積合計一万五三〇三・〇三平方メートルの土地(原告の本社工場の敷地全部、この範囲は別紙図面のとおり。以下、これを「本件全体の土地」という。)を代物弁済価格四億六四三一万八〇〇〇円で、

(2) 本件全体の土地上に存する事務所・更衣室・工場・倉庫等合計一二棟の建物(これらの配置は、別紙図面のとおり。以下、これを「本件全体の建物」という。)を、代物弁済価格七五七七万二〇〇〇円で、

(3) 右工場内に設置されている本件機械装置を代物弁済価格一億二一二一万七〇〇〇円で代物弁済し、原告が費用を負担してその所有権移転登記手続をし、その引渡しは占有改定の方法により行う。

(五) 右(三)の債務額と右(四)の代物弁済価格との差額一億四七九八万〇五二五円について、丸紅はその利息を免除し、その返済時期・方法については原告と丸紅とが別途協議のうえ決定する。

(六) 丸紅は、原告に対し、右(四)の代物弁済物件(以下「本件代物弁済物件」という。)の明渡しの履行を昭和四六年三月末日まで猶予し、原告はその明渡猶予期間中本件代物弁済物件を本来の用法に従つて使用することができるものとし、原告は丸紅に対し同四五年四月から右明渡期限まで損害金として毎月末に四一六万円(最終月は四二四万円)を支払う。ただし、本件代物弁済物件のうち、別紙図面斜線部分の土地及び建物(以下、これらを「本件事務所等敷地部分の土地」及び「本件事務所建物等」という。)については丸紅の指示に従い、原告は丸紅に対し、可及的速やかに明け渡さなければならない。

2  右のとおり、本件代物弁済物件のうち本件事務所等敷地部分の土地及び本件事務所建物等については、丸紅の指示があり次第速やかに明け渡すべきものとされているのに対し、その余の部分すなわち、本件工場等敷地部分の土地及び本件工場・倉庫並びに本件機械装置については、昭和四六年三月末日まで一年間の明渡猶予がなされた。これは、とりあえずは、本件全体の土地、本件全体の建物及び本件機械装置のすべてを暫定的に代物弁済としておくものの、本件工場等敷地部分の土地、本件工場・倉庫及び本件機械装置については今後一年間における原告の実績をみたうえで、その最終処理方法を決定することとしたためである。

3  そして、その後一年間における原告の業績は上昇傾向を示し、原告と丸紅とは右代物弁済の最終処理方法について協議を重ねた結果、昭和四六年一二月二〇日、沼田簡易裁判所同年(イ)第三号売買代金等請求和解事件において、原告と丸紅との間に、左記のような内容の和解(以下「本件和解」という。)が成立した。

(一) 丸紅と原告とは、丸紅を売主とし原告を買主として、昭和四六年九月三〇日、本件工場等敷地部分の土地、本件工場・倉庫及び本件機械装置(以下、これらを一括して「本件買戻し物件」という。)について、代金は一括して三億九九〇〇万円とする売買契約(以下「本件買戻し契約」という。)が成立したことを確認する。

(二) 丸紅と原告とは、前記1項(五)記載の差額債務一億四七九八万〇五二五円について、昭和四五年四月一六日、準消費貸借が成立したことを確認する。

(三) 原告は、丸紅に対し、右(一)の売買代金及びこれに対する年九・一二五パーセントの割合による分割割増金並びに右(二)の準消費貸借債務金を所定の割賦方法に従い、昭和四六年四月から同五六年三月まで一〇年間の分割により支払うこと(同四六年四月分から同年一一月分までは支払済み)。

(四) 本件買戻し物件の所有権移転時期は、原告が売買代金及び分割割増金を完済したときとし、その所有権移転と同時に丸紅は原告に対し、本件工場等敷地部分の土地及び本件工場・倉庫について所有権移転登記手続をし、本件機械装置を引き渡し、右登記手続に要する費用は原告が負担する。

(五) 丸紅は、本件全体の土地(計一一筆、実測面積一万五三〇三・〇三平方メートル)を一筆の土地とする合筆登記、更にこれを本件工場等敷地部分の土地(八一一六・二六平方メートル)及び本件事務所等敷地部分の土地(七一八六・七七平方メートル)に分割する分筆登記手続をし、本件全体の建物についても本件事務所建物等と本件工場・倉庫とを区分するため分割登記手続をし、右合筆、分筆又は分割の各登記手続に要する費用は原告が負担する。

(六) 原告は、所有権移転前であつても、本件工場・倉庫及び本件機械装置を使用することができるものとし、本件工場・倉庫、本件機械装置及び本件工場等敷地部分の土地の維持、管理、修理又は改良に要する費用は、すべて原告が負担する。

(七) 原告は、丸紅に対し、本件事務所等敷地部分の土地及び本件事務所建物等が丸紅の所有に属することを確認し、昭和四七年三月末日限りこれを明け渡すこと。

(八) 本件買戻し物件に課される固定資産税、都市計画税その他の公租公課については、昭和四六年一月一日以降原告が負担する。

(九) 丸紅は原告に対し、本件買戻し物件について一切の瑕疵担保責任を負わない。

4(一)  右のとおり、昭和四五年四月一六日の本件代物弁済契約から一年間の試験観察期間を経た結果、原告と丸紅とは、原告の工場を存続させる方向で債権債務関係の最終的な整理をすることとなり、その後その具体的実行方法、条件等についての協議に時間が費やされはしたものの、同四六年一二月二〇日には本件和解が成立したわけである(同四六年四月分から同年一一月分までの割賦支払については和解成立前既に履行済み)が、この同四五年四月一六日の本件代物弁済契約と同四六年一二月二〇日の本件和解とは、別個独立のものではなく、前者が暫定処理、後者が確定処理という一体の関連に立つものであることは、以上の経過に照らして明らかである。

したがって、本件代物弁済契約と本件和解とは一連のものとして一体をなすものであると認めるべきであり、右和解においては権利関係の処理の都合上売買という用語を用いているとはいえ、それを独立した通常の売買と同視することは相当でなく、代物弁済による債権債務関係の最終処理の確定ないしは少なくとも譲渡担保物件の買戻しと認めるのが相当であり、本件工場等敷地部分の土地、本件工場・倉庫及び本件機械装置については譲渡担保の趣旨に限定した外形上の所有名義の移転復帰という変動はあつたにせよ実質上の権利変動が生じたことはなく、結局のところ実質的には原告と丸紅との債権債務関係は、原告の丸紅に対する債務合計八億〇九二八万七五二五円のうち、

(1) 二億六二三〇万七〇〇〇円については、本件事務所等敷地部分の土地及び本件事務所建物等の代物弁済により、

(2) 残金五億四六九八万〇五二五円については、昭和四六年四月から同五六年三月まで一〇年間の割賦弁済により、

整理することとされたにすぎないのである。

(二)  右の事実は、(1)本件代物弁済契約において所有権移転登記手続費用が登記を受ける丸紅ではなくて原告の負担とされている(前記1項(四))のに対し、本件和解においては所有権移転登記手続費用が登記を受ける原告の負担とされ(前項(四))、また、合筆、分筆又は分割の各登記手続に要する費用も登記名義人である丸紅ではなくて原告の負担とされていること(前項(五))、(2)本件工場等敷地部分の土地その他の公租公課について昭和四六年一月一日以降原告が負担することとされ(前項(八))、その基準時が本件和解成立時(同年一二月二〇日)でもなければ、本件買戻し契約成立時(同年九月三〇日、前項(一))でもなく、明渡猶予期限(同年三月末日)でもないこと、(3)本件全体の土地、本件全体の建物及び本件機械装置に関する公租公課は、昭和四五年分については同年一月一日現在の所有名義人として原告が支払つており、同四六年分についても本件工場等敷地部分の土地その他については右のとおり原告が負担するものとされているので、これらを丸紅が負担した事実はなく、結局丸紅が負担した公租公課は丸紅が確定的にその所有権を取得することとなつた本件事務所等敷地部分の土地及び本件事務所建物等に関するもののみであつて、しかもそれは同年一月一日以降の分についてだけであることからも明らかである。

5(一)  原告が、昭和四五年四月一六日付けの本件代物弁済契約に伴い丸紅に対する債務のうち六億六一三〇万七〇〇〇円を消滅させ、帳簿価額との差額二億二一九二万六四一二円を売却益として計上するという会計処理をしたことは被告の指摘するとおりであるが、本件代物弁済契約が少なくともその代物弁済物件の一部については最終処理が一年間猶予されていたものであることからして、厳密にいえば、原告の右会計処理は誤りであつたとしなければならない。

しかしながら、譲渡担保であるとはいえ外形的には所有名義の変動があつたのであるから、この外観的事実に従つていつたんは債務消滅・売却益計上とする会計処理を行つたとしても、譲渡担保状態が解消し、旧に復した際には、債務及び買受損の計上として組み戻す会計処理をして前記損益の修正をすることもできるのである(計算書類規則四二条二号)から、原告の行つた右会計処理の誤りは、必ずしも治癒不能のものであるとはいえない。殊に本件の場合、本件事務所等敷地部分の土地及び本件事務所建物等のように確定的に割譲することがほとんど不可避な部分と、本件工場等敷地部分の土地、本件工場・倉庫及び本件機械装置のように一年間原告の実績をみたうえでその最終処理方法を決定することとされた部分とが混在し、しかもその区分には若干の流動性があり、かつ、その最終処理に際して原告の負担すべき債務額も確定していないという状況になつたのであるから、とりあえずは全体について債務消滅・売却益計上とする会計処理を行つておいて、最終処理において原告に残される物件及びそれに伴い原告の負担すべき債務額が確定した段階で、その部分について、債務及び買受損の計上として組み戻す会計処理をするという便法をとることも、あながち許されないものであるとまではいえない。

(二)  原告が丸紅に対し損害金五〇〇〇万円を支払つたことも事実であるが、これは、代物弁済物件の明渡しを遅延したことにより支払つたものではなく、本件代物弁済契約の中において、本件資産の明渡猶予の対価として、約定されたもので、当時原告は丸紅に対し八億円を超える債務を抱え、その金利負担が著しく経営圧迫していたところから、丸紅としては本件代物弁済契約により原告の債務を棚上げし金利負担のない状態で一年間原告の業績をみてから原告に対する最終処理方法を決定することにしたのであるが、その一年間における本件全体の建物及び本件機械装置の減価償却費まで丸紅が負担すべき筋合はなく、かつ、これを原告が負担したうえでの経営実績でなければ金利負担のみの免除による波及効果の判断材料とはならないというところから、これは原告が負担すべきものとされ、この一年間の減価償却費相当額として原告は丸紅に対し合計五〇〇〇万円を支払うこととなつたのである。ちなみに、昭和四四年五月期における本件全体の建物及び本件機械装置の減価償却費は合計四四七四万八六八九円であつたし、後に計算したものではあるが同四六年五月期における見積償却額は合計五〇〇一万三三二四円である。

したがって、この五〇〇〇万円の支払の事実は、かえつて本件代物弁済契約が一年後において、最終処理方法を決定することを予定した暫定的なものであつたことを示すものであるとはいいえても、本件代物弁済契約と本件買戻し契約を完全に別個のものであるとする理由とはならない。

(三)  なお、本件機械装置の売却益一五七四万三五五〇円は、丸紅が昭和四六年三月三一日の未償却残高九一二五万三六七三円に依拠して代金を九一〇二万七八三〇円としたところ、その後同年九月三〇日までの減価償却費一五九六万九三九三円を損金として計上しているので、その一部の見合として益金計上しただけのことであり、本件工場・倉庫の売却益五〇万一一三三円は、丸紅が同年三月三一日の本件全体の建物の末償却残高合計七〇五五万九九二二円に依拠して本件工場・倉庫の代金を六〇〇〇万円としたところ、その後同年九月三〇日までの本件全体の建物の減価償却費合計二九二万三二五六円を損金として計上しているので、そのうち本件工場・倉庫に相当するものの一部の見合として益金計上しただけのことである。また、本件工場等敷地部分の土地の売却益一二七万〇三三一円は、丸紅が行つた各物件への売却代金の割振りにより、同年四月一日から同年九月三〇日までの本件工場・倉庫及び本件機械装置の減価償却費として損金計上されたものの一部の見合として、右益金に振替計上されることになつただけのことである。

したがつて、いずれも損金計上すればそれに対応する益金計上を要するという見合勘定の関係にあるだけのことで、いわば会計処理上のテクニックの問題にすぎず、これをもとに取引の実態についてうんぬんすることは相当でない。

三  物件価格について

1  原告の本件代物弁済物件取戻しの申出は、本件代物弁済物件の全部についてしたものではなく、本件事務所等敷地部分の土地及び本件事務所建物等は代物弁済として丸紅に確定的に取得させ、本件工場等敷地部分の土地、本件工場・倉庫及び本件機械装置だけを取り戻すというものであるから、原告の総債務のうち代物弁済により確定的に消滅させる部分と物件の取戻しに伴い原告の債務として復活させる部分とに分ける必要が生じ、その区分を行うに当たつては、本件代物弁済契約に付せられた各物件の価格に依拠するのが相当であるというところから、原告の取り戻すべき物件について代物弁済価格に依拠した価格が問擬されたことは事実であるが、これはあくまでも原告が負担すべき債務金額を算定するためのものであつて、各別に物件価額を定めるという趣旨のものではない。そして総代金三億九九〇〇万円と定められたのであるから、丸紅と原告とが各別に各物件について異なつた代金額の割振りをして各々が健全な企業会計の原則に基づき、適正な売却価格、適正な取得価格にして会計処理を行うことは一向に差し支えないはずである。

なお、原告は、本件工場・倉庫等の買戻しについて各物件について売買代金を指定したという事実はない。

2(一)  更に、買戻しの基礎となつた代物弁済価格は、丸紅が商社としての立場から、仮に代物弁済の全物件が現実に自己の所有物となつたとしても、自らそれを使用して工場を経営することはできないので、工場を廃止し、転売して債権の回収を図ることを前提として、パイプライン装置等一億三七五〇万円のものを無価値とし代物弁済の価格設定から除外するなどして一方的に定めたもので、到底物件の価格を正当に反映しているものとはいえない。

(二)  すなわち、昭和四五年四月一六日に本件代物弁済契約が成立した時点における帳簿価格(減価償却前)は、本件全体の土地一六四一万〇三三一円、本件全体の建物一億〇二〇八万一二五八円、本件機械装置三億二〇七一万四一七三円であつたが、本件代物弁済契約約においては、丸紅が一方的に次のとおり算定した。

(1) 本件全体の土地 四億六四三一万八〇〇〇円

坪当たり九万円と見積り、面積を五一五九・〇九坪として一〇〇〇円未満を切り捨て、右価格とされた。(なお、本件全体の土地の面積は、当初は右のように五一五九・〇九坪(約一万七〇二五平方メートル)とされていたが、公図等の詳細調査の結果、廃公道敷等が混在していることが判明し、それらを除く実面積は一万五三〇三・〇三平方メートル(約四六三七坪)となった。)

(2) 本件全体の建物 七五七七万二〇〇〇円

簿価一億〇二〇八万一〇〇〇円(一〇〇〇円未満切捨て。以下同じ)のところ、昭和四四年六月から同四五年三月まで一〇か月分の減価償却費七三六万六〇〇〇円を控除して、同月末現在の帳簿価格を九四七一万五〇〇〇円とし、その二〇パーセントである一八九四万三〇〇〇円を減額して、右価格とされた。

(3) 本件機械装置 一億二一二一万七〇〇〇円

昭和四四年五月期末の簿価三億〇九八二万九〇〇〇円(一〇〇〇円未満切捨て。以下同じ)のうち、パイプライン装置等一億三七五〇万円を除外し、残余の一億七二三二万九〇〇〇円に同年六月以降における期中増の分一〇八八万五〇〇〇円を加算して一億八三二一万四〇〇〇円となるところ、同月から同四五年三月まで一〇か月分の減価償却費三一六九万二〇〇〇円を控除して、同月末現在の帳簿価格を一億五一五二万二〇〇〇円とし、その二〇パーセントである三〇三〇万五〇〇〇円(この場合は一〇〇〇円未満切上げ)を減額して、右価格とされた。

(4) 右各価格設定はすべて丸紅により一方的にされたものであるが、建物及び機械について帳簿価格から二〇パーセントの減額がされた根拠は不明である。

(三)  右のとおり、丸紅は、代物弁済の物件を解体し、処分することを考え、解体搬出すれば利用価値がなくなるパイプライン装置等を無価値としたり、その余の機械設備も建物も同様の趣旨で価値がなくなるという判断からか、帳簿価格から根拠もなく二〇パーセント減額するなど、一方的に設定した価格であるから、これに準拠することは相当でないといわなければならない。

3  なお、仮に被告主張のような考え方を採用し、本件のように事業が維持継続されている過程において、土地と償却資産とが併せて代物弁済の目的となり、次いでこれが買い戻されたような場合、まず土地価格を時価相場をもとに算定してこれを買戻代金から控除し、残余の買戻代金を償却資産の価格に割振るという方法をとると、地価が慢性的上昇傾向にある現時の状況下にあつては、本来潜在的なものにすぎなかった土地の評価益が安易に顕在化されるのに反し、償却資産は常に売却時価が帳簿価格を大幅に下回り不当に評価損を顕在化させることになり、健全な企業会計の上から二重の不当性を招くといわなければならない。

四  以上二、三掲記の理由により、原告は、本件代物弁済契約ないしは本件買戻し契約において所有権の移転がなかつたこと、事業継続を前提とした価格が正当な価格であると考えられることから、次のとおり、原告の昭和四四年五月の期末における帳簿価格を前提として、本件工場・倉庫及び本件機械装置の価格を算定し、減価償却額を算出した。

(一)  本件工場・倉庫 七七三二万五九六七円

昭和四四年五月の期末における本件全体の建物の帳簿価格は一億〇二〇八万一二五八円であり、その内訳は、

本件工場・倉庫 八五七五万六七三二円

そのうち、工場二棟 七九七六万五一七二円

この耐用年数三五年、減価償却率年〇・〇六四

倉庫二棟 五九九万一五六〇円

この耐用年数一六年、減価償却率年〇・一三四

本件事務所建物等 一六三二万四五二六円であつた。

原告の所有に復帰した本件工場・倉庫は、昭和四五年五月及び同四六年五月の各期末にあつては代物弁済物件として簿外資産となつていたが、簿外資産の償却費は損金不算入とされている(基本通達七―五―一、二)とはいえ、同四七年五月期における受入帳簿価格を算出するにあたつては、その間における減価償却費を控除するのが相当であるので、従前どおりの耐用年数、減価償却率を適用して、同四五年五月期の見積償却額を五九〇万七八四一円、同四六年五月期の見積償却額を二五二万二九二四円と計算し、この合計八四三万〇七六五円を同四四年五月の期末簿価八五七五万六七三二円から控除することにより、同四七年五月期における受入簿価として、右価格を算定した。

(二)  本件機械装置 二億〇三七八万一〇五九円

昭和四四年五月の期末における本件機械装置の帳簿価格は三億〇九八二万九一七三円であつたが、右(一)と同じ理由から、従前どおりの耐用年数一一年、減価償却率年〇・一八九を適用して、同四五年五月期の見積償却額を五八五五万七七一四円、同四六年五月期の見積償却額を四七四九万〇四〇〇円と計算し、この合計一億〇六〇四万八一一四円を同四四年五月の右期末簿価から控除することにより、同四七年五月期における受入簿価として、右価格を算定した。

(なお、この算定においては同四四年五月期末の簿価を基礎としているが、同年六月以降に機械設備の一部更新補充等による期中増があり、本件代物弁済契約時における簿価は三億二〇七一万四一七三円であつたのであるから、正確にはこれを基礎とすべきであり、見積償却額は同四五年五月期が六〇六一万四九七八円同四六年五月期が四九一五万八七四七円として、同四七年五月期における受入簿価を二億一〇九四万〇四四八円とすべきであつた。)

(三)  本件工場等敷地部分の土地一億一七八九万二九七四円

右代金総額三億九九〇〇万円から、右(一)の本件工場・倉庫価格七七三二万五九六七円及び右(二)の本件機械装置価格二億〇三七八万一〇五九円を控除した残額を昭和四七年五月期における受入簿価として、右価格を算定した。

(なお、この算定においては、単純に、代金総額から右(一)、(二)の価格を控除したものを土地価格としているが、実質上売渡し、新規買入れという関係があつたわけではないのであるから、正確には昭和四四年五月期の簿価一六四一万〇三三一円を本件全体の土地面積一万五三〇三・〇三平方メートルで除し、本件工場等敷地部分の土地の面積八一一六・二六平方メートルを乗じた価格八七〇万三五三八円を受入簿価とすべきであつた。厳密にいえば、右算定方法によつて、この土地について所定の手続を経ずに一億〇九一八万九四三六円の評価益を計上したことになる。)

(四)  原告は右のように各物件の受入価格を算定したうえで、右(一)の本件工場・倉庫価格及び右(二)の本件機械装置価格を基礎として各年度における減価償却費を計算し、

本件工場・倉庫については、

昭和四七年五月期 五二六万六八八九円、

同 四八年五月期 四八八万七一九四円、

同 四九年五月期 四五三万七五九九円、

本件機械装置については、

昭和四七年五月期 三八五一万四五四三円、

同 四八年五月期 三一二三万五三七一円、

同 四九年五月期 二五三三万一八八六円、を、それぞれ減価償却費として損金に計上したのである。

第七  原告の反論に対する認否

一  原告の反論一は争う。

二1  同二1、2のうち原告主張の日に本件代物弁済契約が締結されたこと、同契約によると代物弁済の物件の明渡履行期に二通りの定め方があることは認めるが、その余は争う。

2  同二3のうち、原告主張の日に本件和解が成立したことは認めるが、その余の事実は知らない。

3  同二4の主張は争う。

4  同二5(一)ないし(三)の主張は争う。

三1  同三1の事実は否認し、主張は争う。

2  同三2(一)ないし(三)は争う。

3  同三3の主張は争う。

四  同四の主張は争う。

第八  原告の反論に対する被告の再反論

一  本件代物弁済契約及び本件買戻し契約について

1  原告は、丸紅との本件代物弁済契約を原因として所有権を移転した固定資産のうち、買戻した本件資産及び本件工場等敷地部分の土地は譲渡担保であつたから、原告がいつたん代物弁済の履行に伴い本件資産の譲渡、債務の消滅及び譲渡益の計上の会計処理を行つていたとしても、譲渡担保が解消し旧に復した際には前記損益を修正することが許される(計算書類規則四二条二号)旨主張するが、原告の右主張は右代物弁済の内容・効果を無視ないし曲解したものであつて、次に述べる理由から失当である。

2  法人の所持金額の計算上、費用と収益をいずれの事業年度に計上すべきかについて法人税法は別段の定めを設けたものの、原則的な基準については明文の規定をおかず、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従つて計算することとされている(同法二二条四項)。

そして、法人税の課税上法人の有する固定資産については、その支配権が他に移転するという事実が発生した機会に当該固定資産の値上り益を含む譲渡収益を精算して、これを所得金額の計算上益金に算入するものとされ、当該収益は固定資産の引渡しのあつた日の属する事業年度の益金に算入することを原則とするものの、法人がその譲渡に係る売買契約等の効力発生の日以後引渡しの日までの間における一定の事実、例えば売買代金の相当部分の授受等の事実の生じた日に当該収益の発生と認識し、当該事実の属する事業年度の益金に算入しているときは、課税所得の計算に当たつてはこれを認めることとされているのである(昭和五五年直法二―八改正前の法人税基本通達二―一―三)。

3  ところで、固定資産を目的物件とする代物弁済契約の履行は、右代物弁済の前提となつた代物弁済契約が担保権の設定を目的としたものであるか否かにかかわらず、既存の債務について本来の金銭給付によつてする弁済に代えて目的物件の所有権を移転すること、つまり目的物件の給付をもつて債務の弁済に充てるものであつて、目的物件の取戻しの余地を右目的物件の提供者に留保するか否かの差異があつても、債権者に目的物件の所有権を取得させることにより債務の消滅を意図するものであるから、代物弁済契約を原因とする目的物件の所有権の移転は資産の譲渡そのものであつて、所有権移転の時点で消滅した債務の額に相当する譲渡対価の額が確定したとみるべきである。

4  以上を本件についてみるに、原告は代物弁済の目的物件の所有権を丸紅に移転したことをもつて譲渡があつたと認識したうえ、これによつて発生した収益を昭和四五年五月期の所得金額の計算上益金の額に算入したものであり、原告のこれらの会計処理は一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に照らして是認することができる。

また、代物弁済を受けた丸紅も、原告に対する債権額を六億六一三〇万七〇〇〇円減額するとともに、代物弁済により取得した物件を自己の固定資産として帳簿上に計上している事実からも、原告と丸紅の双方が右代物弁済による所有権移転の事実を認識していたことは明らかである。

5  仮に、原告が主張するように法人税課税の例外として定められている譲渡担保に相当するものというためには、少なくとも当該譲渡に係る契約上、当該固定資産の所有権の移転が担保提供の目的をもつてされているものであることを確認し得なければならない。

すなわち当該固定資産を債務者である法人が従前どおり自己のものとして使用収益するとともに、当該資産によつて担保する債務に対して通常支払うと認められる利子相当額の支払がされているほか、次の要件を備えていることが不可欠である(法人税基本通達二―二―一。ただし、昭和五五年五月の改正において二―一―一八に変更)。

(一) 譲渡に係る契約において、当該固定資産の所有権の移転が形式上のものであつて債務の弁済の担保として採用されたものであることを明らかにしていること。

(二) 譲渡の実質がなく、債務が存続していることを債務者である法人自身の意思として明示するために、目的物件である固定資産を自己の資産として経理(これによつて担保する債務についても引き続き自己の負債として経理)していること。

しかるに、原告の本件資産に係る経理においては、右の(一)、(二)に掲げる要件を欠いていることは既に述べたとおりであり、また丸紅との契約上からも買戻し、再売買の予約等原告の本件資産の取戻しを定める特約がなく、原告が譲渡担保である旨の主張の根拠とする本件代物弁済契約には、本件資産について単に一年間の明渡猶予の取決めがあるだけである。

したがつて、原告が本件の代物弁済による譲渡から相当期間経過後において業績回復の見込みを得て本件資産の買受けを丸紅に申し出、丸紅との間において新たに本件資産の売買価額を三億九九〇〇万円とする昭和四六年九月三〇日付けの本件買戻し契約が成立したことをもつて、当初の譲渡(代物弁済)契約の一部解除(買戻権の行使)又は弁済による譲渡物件の一部返還と認める余地はなく、原告が自己の行つた本件資産を含む固定資産の譲渡による収益を計上した経理は誤りであつて、本件資産は譲渡担保の目的物件であつたと主張することは失当である。

6  本件代物弁済契約は、その内容及びそれに基づく当事者双方の右会計処理内容等からみれば、これを譲渡担保とみることができないことは前記のとおりであるが、また、右本件資産の売買ないし、即決和解等による別途確定処理の予定された債権債務の暫定処理とみる余地もない。

すなわち、本件代物弁済契約の内容をみれば、別途協議が予定されているのは代物弁済による残債務についての返済時期、方法のみであること、本件資産についても原告が当然買い戻し得るとする特約はなく、単に一年間の明渡猶予期間が定められていたにすぎず、たまたま原告の事業好転の見通しが生じた結果、原告の申出に基づき、丸紅との価額協議を経て本件資産の売買契約が成立したにすぎないこと、本件和解もたまたま右代物弁済の履行についての紛争を解決する趣旨でなされたものであることは、その申立ての実情の記載及び和解内容から明らかであること等を総合勘案すれば、右代物弁済が別途確定処理の予定された債権債務の暫定処理とは到底認められないところである。

7  そして、原告は、丸紅に対して支払つた五〇〇〇万円について、右金員は本件資産に係る減価償却費相当額であり被告の主張するような代物弁済物件の明渡しの遅延による損害金ではない旨主張する。

しかし、丸紅は原告との間の本件代物弁済契約に基づいて購入した資産について固定資産として帳簿に計上し、確定決算において法の定めるところに従い減価償却費を算出し、昭和四五年九月期ないし同四七年三月期の所得金額の計算上損金に算入し、法人税の確定申告を行つていることに照らしても丸紅が原告から減価償却費相当分を受領する理由は存在しないこと、また、丸紅と原告との間の本件代物弁済契約、及び覚書によつても右五〇〇〇万円が、代物弁済物件の明渡し遅延に関する損害賠償金であることは明らかであるから、原告の右主張は失当である。

8  登記費用及び公租公課について

原告は、本件代物弁済契約において所有権移転登記の手続費用が登記を受ける丸紅ではなくて原告の負担とされているのに対し、本件和解においては右費用が登記を受ける原告の負担とされていること、和解において合筆分筆の各登記手続に要する費用が登記名義人である丸紅ではなく原告の負担とされていること、また、本件資産等の固定資産税等の公租公課について、昭和四六年一月一日以降原告が負担することとされ、その基準時が本件和解成立時(昭和四六年一二月二〇日)でもなければ本件買戻し契約成立時(昭和四六年九月三〇日)でもなく明渡猶予期限(昭和四六年三月末日)でもない事実をとらえ、丸紅が本件資産等の所有権を当初から確定的に取得する意思がなかつたことが明らかであるとし、右登記費用及び公租公課の負担事実からも、本件代物弁済契約と本件買戻し契約とは一連のものである旨主張する。

しかし、固定資産の売買取引において、所有権移転に係る登記手続費用や固定資産税等の公租公課を譲受人、譲渡人のいずれが負担するかは、取引当事者の取決め等によつて決定されるものであり、右費用負担の事実をもつて、直ちに固定資産本体の所有権の移転の有無を表わしているとはいい得ないのであるから、この点からも原告の右主張は失当であるといわざるを得ない。

二  物件価格について

当初、原告は、丸紅から買い戻した本件買戻し物件について丸紅からそれぞれの売却価額を知らされたことがなく、本件資産等に付すべき取得価額を算定するに当たつて丸紅の帳簿価額を採用する余地はなかつたと主張していたが、被告が、原告の右買戻しに係る申出書及び丸紅との合意書を証拠として提出し、原告の右主張が事実に反することを立証するに及んで右主張をひるがえし、丸紅との合意による各資産の価額は原告が負担する債務金額を算定するためのものであつて取得価額の根拠とはなり得ないし、そもそも買戻しの基礎となつた代物弁済価額自体、丸紅が一方的に決定したものであると主張する。

しかしながら、原告の丸紅に対する弁済額を決定するに当たり、丸紅が一方的に決定したとする事実は認めることができないばかりか、丸紅と原告との長年にわたる取引関係及び原告の存在そのものをも左右する土地、工場、機械等の売却価額の決定という重要性にかんがみ、原告がまつたく関与せずに価額決定が行われたとする原告主張は措信することができず、むしろ、代物弁済に係る資産の帳簿価額等の資料を原告が積極的に提示したうえ、債権者、債務者という特別の事情が存在はしたものの、両者が協議のうえ合意し、当時の時価を一応正当に評価したものと推認することができる。

また、買戻しに係る本件資産の価額は丸紅の帳簿価額を基礎として双方合意のもとに算定されたものであつて合理的なものと首肯し得るものである。

したがつて、原告と丸紅との買戻し価額は何ら根拠のないものであるとの原告主張は失当である。

第九  証拠<省略>

理由

一請求の原因一の事実は当事者間に争いがない。

二本件代物弁済契約及び本件買戻し契約について

1  原告と丸紅との間で、昭和四五年四月一六日、本件代物弁済契約を締結したこと、原告は、本件代物弁済物件の譲渡価額と帳簿価額との差額二億二一九二万六四一二円を不動産売却益として同年五月期の所得金額の計算上益金に算入し、また、丸紅に対する債務額のうち、右譲渡価額相当額の債務を減少したうえ、法人税確定申告書を被告に対して提出したこと、丸紅も原告と右代物弁済契約をした同年四月一六日を含む事業年度において本件代物弁済物件を固定資産として帳簿に計上するとともに、原告に対する債権額を六億六一三〇万七〇〇〇円減額したこと、原告は、右代物弁済した土地、建物等の明渡しが遅延したことに伴う同月から同四六年三月までの損害金五〇〇〇万円を丸紅に支払つたこと、原告と丸紅との間で、同年一二月二〇日、沼田簡易裁判所同年(イ)第三号売買代金等請求和解事件において、本件買戻し契約の成立の確認等を内容とする本件和解が成立したこと、同年九月三〇日付けの本件買戻し契約について、丸紅は、本件工場等敷地部分の土地の売買価額二億四七九七万二一七〇円と取得価額二億四六七〇万一八三九円(同四五年四月一六日の土地代物弁済価額四億六四三一万八〇〇〇円に附帯費用八三万四八七〇円を加え、売買土地面積に相当する部分として算出した金額)との差額一二七万〇三三一円、本件工場・倉庫の売買価額六〇〇〇万円と帳簿価額五九四九万八八六七円との差額五〇万一一三三円、本件機械装置の売買価額九一〇二万七八三〇円と帳簿価額七五二八万四二八〇円との差額一五七四万三五五〇円をそれぞれ固定資産売却益として会計処理を行つたことは、当事者間に争いがない。

2  前記争いのない事実に加え、<証拠>によれば、以下の事実を認めることができる。

(一)  原告は、昭和三〇年ころから、丸紅とチョコレートの製造原料の取引を開始し、同三七年ころ、東京都文京区目白台から神奈川県大和市に工場を移転するに当たり、新工場の建物、機械設備の建築、取付一切を丸紅に発注し、五億円程の代金債務を負つたが、工場の稼動が予定よりも遅れて、債務の返済が滞りがちになり、結局、同三九年ころ、丸紅から三〇パーセントの出資を受けてその資本傘下に入り、営業を継続してきたが、丸紅の支援にもかかわらず、依然として原告の業績は赤字を重ね、同四五年ころには、原告は丸紅に対し、八億円余の債務を負うに至つたため、原告代表者と丸紅の原告担当者との間で協議を重ねた結果、本件資産を含む資産のうちの各土地、本件機械装置及び建物(未登記建物を除く)については、両者間の合計三回にわたる代物弁済予約契約(同三七年八月八日、同四〇年三月一一日又は同四三年三月七日付)に基づき、丸紅のための所有権移転請求権保全の仮登記(同三八年八月七日、同四三年一月一九日又は同年四月二二日受付け)とこれに併せて根抵当権設定登記が経由されていたことから、右予約を完結したうえ、右物件につき帰属清算の方法で清算することのほか、右資産のうち、未登記の建物等については丸紅が新たに代物弁済契約をしてその所有権を取得することによつて丸紅に対する債務を整理することにし、同年四月一一日、原告は取締役会で右代物弁済を承認し、次いで、同月一六日、右代物弁済の予約を完結し、本件代物弁済契約を締結した。右契約では、右同日現在の丸紅に対する原告の残債務が八億〇九二八万七五二五円であることを確認したうえ、本件資産を含む資産のうち、右代物弁済予約の目的物件及び同目的外の建物等の全部を六億六一三〇万七〇〇〇円と評価して、これが所有権を移転して右債務を清算し、その残債務一億四七九八万〇五二五円の支払について、丸紅が利息を免除し、その返済時期・方法については別途両者が協議して決定することとしたほか、右物件の明渡しについては同四六年三月末日まで猶予し、その間の使用損害金として毎月末日限り四一六万円(ただし、最終回は四二四万円)を支払うことが合意され、右各物件につき、同四五年四月二一日、丸紅のために同月一六日の代物弁済を原因とする所有権移転登記が経由された。右代物弁済契約を契機として、丸紅は原告に対する経営から手を引き、従前から派遣していた役員をすべて引き上げた。丸紅は、本来、この時点で原告の再建は困難と判断し、原告役員の個人資産だけは残してやりたいとの配慮から、原告を倒産ということではなく、解体する意向であつたが、原告代表者の懇願により、丸紅の更なる恩恵的措置として、本件資産及び本件工場等敷地部分の土地の明渡しを一年間だけ猶予して、操業を継続させることとし、その間の前記使用損害金も本件機械装置の減価償却費を基準として決められた。しかし、丸紅としては、原告の業績が好転することは夢想もしていなかつたから、本件代物弁済契約においては、代物弁済に供された物件の買戻しについては何ら取決めはなされなかつた。なお、本件代物弁済契約により約定された原告の丸紅に対する昭和四五年四月から同四六年三月までの毎月四一六万円(ただし、最終回は四二四万円)、合計五〇〇〇万円の損害金の支払については、同四五年四月一七日に、原告と丸紅との間で、支払われる損害金の合計額はそのままにして、支払方法についてのみ変更することが合意された。

(二)  原告は、昭和四五年五月期の確定申告書及びそれに添付の営業報告書において本件代物弁済物件を固定資産から除外し、一方、右物件の譲渡価額と帳簿価額との差額を営業外収益として計上し、したがつて、当然ながら、次の同年六月一日から同四六年五月三一日までの事業年度分の確定申告書及びそれに添付の営業報告書においても本件代物弁済物件は固定資産から除外したままであり、本件買戻し契約のあつた同年九月三〇日の属する同四七年五月期の確定申告書及びそれに添付の営業報告書において再び本件代物弁済物件のうち本件買戻し物件の取得価額を計上し、また、右物件を固定資産に計上した。

一方、丸紅は、本件代物弁済物件につき、昭和四五年五月一八日に自己の振替伝票に起票し、更に、同月二〇日に固定資産として帳簿に計上し、また、同年四月一日から同年九月三〇日まで、同年一〇月一日から同四六年三月三一日まで、同年四月一日から同年九月三〇日までの各事業年度において本件代物弁済物件のうち、本件全体の建物及び本件機械装置につき減価償却を実施した。

(三)  原告は、本件代物弁済契約後予期に反して業績に好転の見通しを得たので、右契約において未確定となつていた丸紅に対する残債務一億四七九八万〇五二五円の支払方法の協議並びに操業継続のための本件工場等敷地部分の土地、本件工場・倉庫及び本件機械装置の買戻しを丸紅に申し出、昭和四六年九月一七日、原告代表者らと丸紅の担当者との間で、右買戻し物件のそれぞれにつき売買価額を双方から提示したうえで協議し、その結果、本件工場等敷地部分の土地は二億四七九七万二一七〇円、本件工場・倉庫は六〇〇〇万円(内訳、工場一棟三九七八万円、同一棟一六四〇万円、倉庫一棟二二〇万円、同一棟一六二万円)及び本件機械装置は九一〇二万七八三〇円(乙第七号証中には、丸紅が本件機械装置につき九一二五万三六七三円と値を付け、売買価額合計を三億九九二二万五〇〇〇円としたことが記載されているが、後述するように売買価額合計は協議により三億九九〇〇万円と圧縮されたので、右圧縮にかかる値引分は本件機械装置の価額で調整されて、右の価額となつたものであり、このことは前掲乙第八号証の三、第一一号証に照らしても明らかである。)、合計三億九九〇〇万円とされ、右売買価額合計と前記の丸紅に対する残債務の合計額に利息を付加したものを同年四月から同五六年三月までの一〇年間で分割して弁済することとなつた。右買戻し及び残債務の支払は昭和四六年一二月二〇日の本件和解において確認され、丸紅は、これに基づいて、同四七年一月七日、本件買戻し契約による売却益を振替伝票に起票した。

以上のとおりの事実が認められ、右認定に反する原告代表者の供述は前掲各証拠に照らしてたやすく措信し難く、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。

3 以上認定判示の本件代物弁済契約に至る経緯、右契約の内容(とりわけ右契約中に本件買戻し契約に係る物件の買戻しの約定のないこと)、右契約に基づく原告、丸紅双方の会計処理、本件買戻し契約に至る経緯、右契約の内容及び右契約に基づく丸紅の会計処理等に照らすと、本件代物弁済契約により本件代物弁済物件につき原告から丸紅に対し所有権の移転及びこれが登記手続もなされ、次いで、原告の予期しない業績の好転というその後の事情の変化に基づく本件買戻し契約の締結により本件代物弁済物件のうち、本件買戻し物件につき丸紅から原告に対し再び所有権の移転があつたものであり、したがつて、本件代物弁済契約と本件買戻し契約は、別個独立の契約であると解するのが相当であり、前者を譲渡担保契約、後者を担保物件の買戻し契約又は債権債務の確定的処理を目的とした契約と解することは相当ではなく、したがつて、この点に関する原告の主張は採用できない。なお、本件代物弁済物件に係る登記手続費用、公租公課を原告が負担したことはその主張のとおりであるが、これらの負担の存否が所有権の移転の存否を決するものとは解されず、これによつては前記認定を左右するには至らないものというべきである。

また、本件買戻し契約に係る本件資産の価額は前記認定のとおりであつて、原告と丸紅の合意の下に右価額が決定されたことは明らかであり、これを目して不相当な価額であると解する根拠はない。

したがつて、原告が本件買戻し契約により取得した本件資産等に付すべき取得価額は、原告と丸紅との間で合意した売買価額、すなわち本件工場等敷地部分の土地二億四七九七万二一七〇円、本件工場・倉庫六〇〇〇万円(内訳、工場一棟三九七八万円、同一棟一六四〇万円、倉庫一棟二二〇万円、同一棟一六二万円)、本件機械装置九一〇二万七八三〇円とするのが相当である。

三本件資産の減価償却額の算出について

本件資産、すなわち本件工場、倉庫及び本件機械装置の取得価額は前記認定のとおりであるところ、右価額を前提として減価償却の限度額を計算すると、別表四の1ないし3記載の金額となることは、当事者間に争いがない。

してみると、原告が主張する減価償却額のうち別表四の1ないし3記載の償却限度額を超える部分は法人税法上当該期の損金とは認められず、減価償却の限度超過額として所得金額に加算されるべきものである。しかして、右減価償却の限度超過額は、昭和四七年五月期につき二七七九万七六八八円、同四八年五月期につき一七四七万三六四〇円、同四九年五月期につき一四二九万二〇一五円となることは、計算上明らかである。

四昭和四七年五月期の再更正について

前記認定判示のとおり昭和四七年五月期の減価償却の限度超過額は二七七九万七六八八円であるから、同期の再更正に原告主張の違法はないことが明らかである。

五昭和四八年五月期及び同四九年五月期の各法人税額及び過少申告加算税について

昭和四八年五月期及び同四九年五月期の減価償却の限度超過額は、前記認定判示のとおり、それぞれ一七四七万三六四〇円及び一四二九万二〇一五円であり、また、右各期の申告所得金額に対する加算金額、すなわち別表二の2、3の「加算金額」欄記載の所得金額のうち、減価償却の限度額(丸紅から取得した資産の分)を除くその余の加算金額については、原告は明らかに争わないからこれを自白したものとみなし、右各価額及び原告の申告所得金額(これは、当事者間に争いがない。)を前提として、右各期の法人税額及び過少申告加算税を算出すると、別表五の1、2記載のとおりとなる。

してみると、昭和四八年五月期及び同四九年五月期に係る本件更正等は右算出された金額の範囲内であるから適法であるということができる。

六結論

よつて、原告の本訴訟請求はいずれも理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民訴法八九条を適用して、主文 のとおり判決する。

(古館清吾 吉戒修一 河野泰義)

別表一課税処分の経緯

1 昭和四七年五月期

(単位 円)

区分

年月日

所得金額

税額

過少申告加算税

確定申告

47.7.31

△五八、五四一、六八〇

更正

48.3.30

△五四、一一六、九一六

再更正

50.6.30

△三〇、三九七、六一五

審査請求

50.8.26

償却昭過額二二四一万九三〇一円の取消し

同裁決

51.8.30

棄却

2 昭和四八年五月期

(単位 円)

区分

年月日

所得金額

税額

過少申告加算税

確定申告

48.7.31

更正及び賦課決定

50.8.30

四二、四六一、七九七

一四、九四五、五〇〇

七八〇、二〇〇

審査請求

50.10.2

償却超過額一八三二万〇七三九円の取消し

同裁決

51.8.30

棄却

再更正及び賦課決定

55.12.3

四一、五四七、九一二

一四、六〇九、六〇〇

七六三、四〇〇

3 昭和四九年五月期

(単位 円)

区分

年月日

所得金額

税額

過少申告加算税

確定申告

49.7.31

一五三、七三〇、九七六

六一、九〇三、一〇〇

更正及び賦課決定

50.8.30

一九四、二六五、三六〇

七六、八六五、二〇〇

七四八、一〇〇

審査請求

50.10.2

償却超過額一四九八万七九四八円の取消し

同裁判

51.8.30

棄却

再更正及び賦課決定

55.12.3

一九三、五一一、五九一

七六、五五一、〇〇〇

七三二、三〇〇

別紙二

1 昭和四七年五月期

(単位 円)

順番

項目

金額

摘要

申告所得金額

△五八、五四一、六八〇

加算金額

三三、五二二、四五二

貸倒損失中損金不算入額

四、四二四、七六四

役員報酬中損金不算入額

一、三〇〇、〇〇〇

減価償却の限度超過額

(丸紅から取得した資産の分)

二七、七九七、六八八

課税所得金額

△二五、〇一九、二二八

法人税額

過少申告加算額

2 昭和四八年五月期

(単位 円)

順番

項目

金額

摘要

申告所得金額

加算金額

四一、六一四、六九八

交際費等の損金不算入額

一、五二四、一九四

繰越欠損金控除額の過大

一四、三六六、六六一

役員賞与の損金不算入額

二、〇〇〇、〇〇〇

役員報酬中損金不算入額

一、八五〇、〇〇〇

諸会費中損金不算入額

一一、〇〇〇

交際費中損金不算入額

六六七、二九〇

有価証券売却損中損金不算入額

四、二六〇、〇〇〇

減価償却の限度超過額

(丸紅から取得した資産の分)

一七、四七三、六四〇

減価償却限度超過額(⑧以外)

一、六六一、九一三

価格変動準備金超過額過大

△二、二〇〇、〇〇〇

課税所得金額

四一、六一四、六九八

法人税額

一四、六三四、三〇〇

過少申告加算税

七六四、六〇〇

3 昭和四九年五月期

(単位 円)

順番

項目

金額

摘要

申告所得金額

一五三、七三〇、九七六

加算金額

四〇、〇七五、〇九一

交際費等の損金不算入額

三、三四七、七六三

価額変動準備金超過認容過大

二、二〇〇、〇〇〇

繰越欠損金控除額の過大

九、三五二、六四〇

役員報酬中損金不算入額

二、八〇〇、〇〇〇

交際費中損金不算入額

九二六、〇八〇

旅費交通費中損金不算入額

八八一、〇〇〇

営繕費中損金不算入額

二七三、〇〇〇

役員賞与の損金不算入額

五、二二〇、〇〇〇

営繕費中損金不算入額

一、四四九、六〇〇

買掛金中過大計上分

三、九七一、六二一

未払金中過大計上分

一、六七三、〇〇〇

売掛金過少計上分

三四九、二八〇

出資金過少計上分

二〇、〇〇〇

たな卸金額過少計上分

二、二六一、三九四

減価償却の限度超過額

(丸紅から取得した資産の分)

一四、二九二、〇一五

減価償却超過額損金算入額

△三〇三、六二二

有価証券譲渡原価損金算入額

△三、七八〇、〇〇〇

事業税の損金算入額

△四、八五八、六八〇

課税所得金額

一九三、八〇六、〇六七

法人税額

七六、六七三、九〇〇

過少申告加算税

七三八、五〇〇

別表三申告減価償却額

1 昭和四七年五月期四三七八万一四三二円

(単位 円)

種類

取得(帳簿)価額

耐用年数

償却率

期間

償却額

期末帳簿価額

建物

七七、三二五、九六七

五、二六六、八八九

七二、〇五九、〇七八

(工場)

五三、九二九、一〇七

三五

〇、〇六四

一二分の一二

三、四五一、四六二

五〇、四七七、六四五

(同)

一八、八五三、五七三

三五

〇、〇六四

一二分の一二

一、二〇六、六二八

一七、六四六、九四五

(倉庫)

一、九二七、九六九

一六

〇、一三四

一二分の一二

二五八、三四七

一、六六九、六二二

(同)

二、六一五、三一八

一六

〇、一三四

一二分の一二

三五〇、四五二

二、二六四、八六六

機械装置

二〇三、七八一、〇五九

一一

〇、一八九

一二分の一二

三八、五一四、五四三

一六五、二六六、五一六

合計

四三、七八一、四三二

2 昭和四八年五月期三六一二万二五六五円

(単位 円)

種類

帳簿価額

耐用年数

償却率

期間

償却額

期末帳簿価額

建物

七二、〇五九、〇七八

四、八八七、一九四

六七、一七一、八八四

(工場)

五〇、四七七、六四五

三五

〇、〇六四

一二分の一二

三、二三〇、五六九

四七、二四七、〇七六

(同)

一七、六四六、九四五

三五

〇、〇六四

一二分の一二

一、一二九、四〇四

一六、五一七、五四一

(倉庫)

一、六六九、六二二

一六

〇、一三四

一二分の一二

二二三、七二九

一、四四五、八九三

(同)

二、二六四、八六六

一六

〇、一三四

一二分の一二

三〇三、四九二

一、九六一、三七四

機械装置

一六五、二六六、五一六

一一

〇、一八九

一二分の一二

三一、二三五、三七一

一三四、〇三一、一四五

合計

三六、一二二、五六五

3 昭和四九年五月期二九八六万九四八五円

(単位 円)

種類

帳簿価額

耐用年数

償却率

期間

償却額

期末帳簿価額

建物

六七、一七一、八八四

四、五三七、五九九

六二、六三四、二八五

(工場)

四七、二四七、〇七六

三五

〇、〇六四

一二分の一二

三、〇二三、八一三

四四、二二三、二六三

(同)

一六、五一七、五四一

三五

〇、〇六四

一二分の一二

一、〇五七、二一二

一五、四六〇、三二九

(倉庫)

一、四四五、八九三

一六

〇、一三四

一二分の一二

一九三、七五〇

一、二五二、一四三

(同)

一、九六一、三七四

一六

〇、一三四

一二分の一二

二六二、八二四

一、六九八、五五〇

機械装置

一三四、〇三一、一四五

一一

〇、一八九

一二分の一二

二五、三三一、八八六

一〇八、六九九、二五九

合計

二九、八六九、四八五

別表四 被告主張の減価償却限度額

1 昭和四七年五月期一五九八万三七四四円

(単位 円)

種類

帳簿価額

耐用年数

償却率

期間

償却限度額

期末未償却残額

建物

六〇、〇〇〇、〇〇〇

三、〇八〇、五五〇

五六、九一九、四五〇

(工場)

三九、七八〇、〇〇〇

三五

〇、〇六四

一二分の九

一、九〇九、四四〇

三七、八七〇、五六〇

(同)

一六、四〇〇、〇〇〇

三五

〇、〇六四

一二分の九

七八七、二〇〇

一五、六一二、八〇〇

(倉庫)

一、六二〇、〇〇〇

一六

〇、一三四

一二分の九

一六二、八一〇

一、四五七、一九〇

(同)

二、二〇〇、〇〇〇

一六

〇、一三四

一二分の九

二二一、一〇〇

一、九七八、九〇〇

機械装置

九一、〇二七、八三〇

一一

〇、一八九

一二分の九

一二、九〇三、一九四

七八、一二四、六三六

合計

一五、九八三、七四四

2 昭和四八年五月期一八六四万八九二五円

(単位 円)

種類

未償却残額

耐用年数

償却率

期間

償却限度額

期末未償却残額

建物

五六、九一九、四五〇

三、八八三、三六九

五三、〇三六、〇八一

(工場)

三七、八七〇、五六〇

三五

〇、〇六四

一二分の一二

二、四二三、七一五

三五、四四六、八四五

(同)

一五、六一二、八〇〇

三五

〇、〇六四

一二分の一二

九九九、二一九

一四、六一三、五八一

(倉庫)

一、四五七、一九〇

一六

〇、一三四

一二分の一二

一九五、二六三

一、二六一、九二七

(同)

一、九七八、九〇〇

一六

〇、一三四

一二分の一二

二六五、一七二

一、七一三、七二八

機械装置

七八、一二四、六三六

一一

〇、一八九

一二分の一二

一四、七六五、五五六

六三、三五九、〇八〇

合計

一八、六四八、九二五

3 昭和四九年五月期一五五七万七四七〇円

(単位 円)

種類

未償却残額

耐用年数

償却率

期間

償却限度額

期末未償却残額

建物

五三、〇三六、〇一八

三、六〇二、六〇四

四九、四三三、四七七

(工場)

三五、四四六、八四五

三五

〇、〇六四

一二分の一二

二、二六八、五九八

三三、一七八、二四七

(同)

一四、六一三、五八一

三五

〇、〇六四

一二分の一二

九三五、二六九

一三、六七八、三一二

(倉庫)

一、二六一、九二七

一六

〇、一三四

一二分の一二

一六九、〇九八

一、〇九二、八二九

(同)

一、七一三、七二八

一六

〇、一三四

一二分の一二

二二九、六三九

一、四八四、〇八九

機械装置

六三、三五九、〇八〇

一一

〇、一八九

一二分の一二

一一、九七四、八六六

五一、三八四、二一四

合計

一五、五七七、四七〇

別表五

1 昭和48年5月期の法人税額及び過少申告加算税の算出方法 (単位 円)

(1) 法人税法66条に規定する法人税額

① 昭和48年5月期の所得金額 41,614,698

② 同上に対する法人税法66条・租税特別措置法42条に規定する

法人税額〈昭和49年法律16号改正前〉・〈昭和45年法律38号追加〉

41,614,000×36.75% 15,293,145

〈国税通則法118条1項により1,000円未満切捨て〉

(2) 法人税法68条に規定する所得税額

① 利子に係る所得税額 651,644

② 配当に係る所得税額 7,200

③ 法人税法68条に規定する控除される所得税額(①+②) 658,844

(3) 差引所得に対する法人税額

(1の②−2の③) 14,634,300

〈国税通則法119条1項により100円未満切捨て〉

(4) 差引納付すべき法人税額

(2の③+3) 15,293,100

〈国税通則法119条1項により100円未満切捨て〉

(5) 過少申告加算税

15,293,000×5% 764,600

2 昭和49年5月期の法人税額及び過少申告加算税の算出方法 (単位 円)

(1) 法人税法66条に規定する法人税額

① 昭和49年5月期の所得金額 193,806,067

② 同上に対する法人税法66条(昭和49年法律16号改正)に規定する法人税額

193,806,000×40% 77,522,400

〈国税通則法118条1項により1,000円未満切捨て〉

(2) 法人税法67条に規定する同族会社の特別税額

① 昭和49年5月期の課税留保金額 8,923,000

② 同上に対する法人税法67条(昭和41年法律32号改正)に規定する法人税額

8,923×10% 892,300

(3) 法人税法68条に規定する所得税額

① 利子に係る所得税額 1,731,784

② 配当に係る所得税額 9,000

③ 法人税法68条に規定する控除される所得税額(①+②) 1,740,784

(4) 差引所得に対する法人税額

(1の②+2の②−3の③) 76,673,900

〈国税通則法119条1項の規定により100円未満切捨て〉

(5) 既に納付の確定した法人税額

昭和49年5月期確定申告書の法人税額 61,903,100

(6) 差引納付すべき法人税額

(4−5) 14,770,800

(7) 過少申告加算税

14,770,000×5% 738,500

図面(建物配置図)<省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例